フリーライター宮島理のプチ論壇 since1997
「改革する保守」をキーワードに、政治・経済など幅広いテーマを扱う。

『あなたのスマートフォンが狙われている!』
宮島理著
アスキー新書(アスキー・メディアワークス)
定価780円(本体743円)
2011年10月11日発売
ISBN978-4-04-870921-7
「スマートフォンやタブレット端末の普及が急速に進むなか、Androidをターゲットにしたウイルスや巧妙化するIT犯罪も急増しています。本書は最新のIT犯罪の手口と、身を守るためのノウハウを解説します」

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 主な著書に『雇用大崩壊 サラリーマンがなくなる日』(中経出版)、『就職氷河期世代が辛酸をなめ続ける』(洋泉社)、『現在がわかる! 格差社会』(九天社)、『読むだけですっきりわかる日本と世界のニュース』(別冊宝島、共著)、『子どもとケータイ Q&Aで学ぶ正しいつきあい方』(リックテレコム、共著)、『嫌韓流の真実!ザ・在日特権』(宝島社、共著)、『昭和・平成 日本「黒幕」列伝』(別冊宝島、共著)、『経済大論戦 1冊で50冊の経済書を読む』(朝日新聞社、共著)、『素顔の科学誌』(東京書籍、共著)。
 政財界やオピニオンリーダーへのインタビュー・リライト、書籍などの構成協力も多数。また、ウェブで読めるものとしては、「「最強」オフィスマネジメント」(日経BP)、「MONEYzineニュース」(翔泳社)、「ネット危険地帯」(日本経済新聞)、「がんばれ ニッポンの製造業 今こそ成長への布石を打て」(日経BP)、「世界同時不況に備えよ――今この書に学べ!」(日経BP)、「位相シフトディジタルホログラフィ装置」(理化学研究所)、「抗生物質を不活化する酵素遺伝子の開発」(理化学研究所)など。
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愚民思想が根強い人気を持つ理由



 野田政権の支持率がわずか4カ月で半減した。わずか4カ月で支持から不支持に回った人々は「愚民」なのだろうか。
 世論調査によれば、野田政権の支持率が急落している。読売新聞社Link の調査では、就任時に65%もあった支持率が、今では37%にまで下落している。
 この激しいアップダウンをどう理解すればいいのだろうか。いわゆる愚民思想の立場に立てば、わずか4カ月で支持から不支持に回るような人々は「愚民」である。消費税増税に反対するといっても、野田政権は発足当初から増税路線を明確にしていた。それを「知らなかった」「説明不足だ」というのは、おのれの不勉強と無知を他人のせいにしているという意味で、正真正銘の「愚民」と言える。
 しかし、政策も見ずに感情で(あるいは「様子見」という名の日和見で)支持するような「愚民」が、わが国の3分の1以上を占めているとは思えない。やはり、4カ月前には65%の人が増税路線を支持していたのであり、その後、不支持に回った人々は、(「歳出削減が足りない」「財政再建の道筋が見えない」など)各論について異議を唱えているだけで、今も増税路線支持という総論へのスタンスは揺らいでいないのだろう。
 このように冷静に考えれば、愚民思想が入り込む余地はないはずである。ところが、愚民思想というのは根強く、「ほんと、日本人ってバカばっかりだよな」という具合に、愚民思想に賛同する人というのは結構存在する。
 愚民思想が根強い人気を持っているのは、「人間は自分が批判の対象になっているとは想像もしないものである」という真理が背景にあるように思う。私がこの真理を実感したのは、綾小路きみまろLink のファンを分析するテレビ番組を見た時だ。
 その番組では、「綾小路きみまろのファンは、毒舌ネタのことを他人事だと思っている」という驚くべき事実を告げていた。綾小路きみまろの毒舌ネタは、中高年の哀愁を笑い飛ばす自虐ネタであり、ファン(当然、中高年が多い)もまた、自分自身を笑い飛ばしているものだと私は思っていたのだが、実際はそうではなかった。
 番組スタッフが綾小路きみまろの毒舌ネタを見せた後に感想を聞くと、多くのファンが「いるよね、こういう人(笑)」という反応を見せていた。ファンにとって、毒舌は自分自身に向けられたものではなく、あくまでも「自分以外のかわいそうな中高年」を綾小路きみまろと一緒になってイジッている感覚だったのだ。
 このような鈍感力Link は、ベストセラーになった『バカの壁』Link にも通じる。私はこの本を読んだ時、「はいはい、どうせバカで話が通じなくてすみませんね」と、養老センセイに腹を立てたものだったが(笑)、どうも世間の反応は違ったらしい。
 この本を読んだ人の多くは、「いるよね、こういう話の通じないバカ」と、溜飲を下げていたというのを知って、私は軽くショックを受けた。「みんな、よほど自分に自信があるんだな」と半ばうらやましくなったと同時に、「こういう鈍感力を発揮することで、世の中は丸く収まっているんだな」と、アホみたいな当然の事実に気づかされたのだった。
 愚民思想も、私なんかはついつい「はいはい、どうせ愚民で何も知らなくてすみませんね」といじけてしまい、「愚民なんて言わせないように勉強してやる」と(勉強が身につくかどうかは別として)単純に考えてしまうのだが、これだけ愚民思想が根強いところを見ると、それなりに多くの人々が自分自身の頭脳と階級性を過信しているらしい。少なくとも為政者は、愚民思想に逃げることなく、有権者の各論の違いをしっかりと考察して受け止めてほしいものである。



バカの壁   鈍感力   愚民思想  

— posted by 宮島理 at 08:12 pm  

オフィス環境に関する3つの記事

 オフィス環境についての記事を「日経BPネット」に書きましたのでお知らせします。「「最強」オフィスマネジメント」において以下の3つの記事(それぞれ前後編)を執筆しました。



「日本企業のオフィスは「作業場」に過ぎない
誤った「3つの通念」がオフィス改善を阻んでいる【前編】」

(三木光範・同志社大学教授にインタビュー)

「最適な明るさで生産性を高める「知的照明」
省エネも可能、オフィスに四季の変化をつくり出す【後編】」

(三木光範・同志社大学教授にインタビュー)

「[日本マイクロソフト] 新本社オフィスは人と人のつながりを徹底的に重視
フリーアドレス制を導入、共有スペースで対話の場を実現【前編】」

(日本マイクロソフトに取材)

「[日本マイクロソフト] 細心のオフィス作りで従業員の満足度を高める
独自のオフィス環境調査をもとに13カ月で本社移転を完了【後編】」

(日本マイクロソフトに取材)

「[ユニクロ] グループアドレス制を導入、目的は人材育成
社員の自律を促すフリーアドレス制から次のステップへ【前編】」

(ファーストリテイリングに取材)

「[ユニクロ] 仕事は7~16時、ワークライフバランスを重視
FRMICでグローバル人材を育て、将来の経営幹部候補に【後編】」

(ファーストリテイリングに取材)

人材育成   ワークライフバランス   グループアドレス   フリーアドレス   知的照明   マネジメント   オフィス環境  

— posted by 宮島理 at 02:28 pm  

なぜ日本は変わらないのか

 口先だけで言うことがコロコロ変わる……そんな日本の意思決定が、日本の変革を遅らせている。これを変えるには、「空気」に流される意思決定を変えるしかないだろう。
 どうして日本では改革(潜在成長率上昇と財政再建=世代間格差解消)が進まないのかをこの数年、特に考えてきた。もちろん大きな理由は根強い既得権の存在だ。同時に、他人の既得権(たとえば公務員利権など)は批判するくせに、「自分への補助金や保護規制は良い既得権」(たとえば社会保障利権など)として擁護する「利権脳」が、実質的な改革を阻害してきた。自分の身を切ろうとしない「利権脳」では、スケープゴート的な「改革(のようなもの)」はできても、本当の意味での改革は決して進まない。
 ただ、「反原発」あるいは「脱原発」狂騒となった今年を振り返って感じるのは、既得権よりもさらに根深いところに、日本の意思決定の問題が存在するということだ。それは政治家から、会社の得意先、上司、さらにはマスメディア、「民意」に至るまで蔓延っている、無責任で不安定な意思決定の問題である。
 まず、日本の政治は変わらないと言われる。それは、公務員が既得権を手放さないということもあるが、同時に、コロコロ変わる政策に対して、常にオプションを残しておこうという業務上の要請もあるのではないか。
 具体的にはエネルギー政策がわかりやすい。わが国は、火力、原子力、水力を中心にバランス良く組み合わせたエネルギー供給を行ってきた。ところが、2009年の政権交代をきっかけに、火力が否定され(温暖化ガス削減)、水力も否定され(脱ダム)、原子力が推進された(原発ルネサンス)。実行部隊である公務員が意思決定に素直に従えば、火力と水力を大幅に減らし、原子力を増強するということになる。
 そこへ福島での原発事故が起きた。一転して、政策は原子力否定となり、火力や水力が増強されることになった。原発事故前と後とで、原発のリスクは変わっていないが、事故によって感情的になった「民意」や政治家は、大慌てで政策を変えたのである。
 意思決定が根拠なき「空気」に流され、コロコロと変わってしまう時、「責任ある」(というか尻ぬぐいさせられる)実行部隊はどのように考えるか。どんな意思決定が下ったとしても、大きく現状を変えずに、いつでも方向転換できるよう、オプションを最大限確保しようとする。
 わかりやすく、会社の上司や、仕事上の得意先を思い浮かべてもらいたい。指示がコロコロ変わる上司や得意先というのは、世間に腐るほどいるだろう。プランAからプランCまであった場合、そのような上司が「よし、(明確な理由は特にないけど)プランAで行こう!」と言ったとしても、部下は額面通り受け取りはしない。密かにプランBやプランCの準備もしておく。でないと、「(明確な理由は特にないけど)やっぱりプランBだな」となった時に対処できないからだ。「プランAという指示だったじゃないですか」「だから私はプランBが最善だと言ったじゃないですか」と文句を言ったところで無駄である。
 小さなプロジェクトでなおかつプラン相互が独立しているなら、プランAからプランCまで用意できるのでさほど影響はないと言える(担当者の徹夜が増えるという意味では影響がないことはないが)。しかし、複数のプランが相対立せざるをえない「社内改革」などの号令がかかった場合、不安定な意思決定に振り回されることを担当者が察知すれば、いつでも方向転換できるように、無難に大きく変えないようにするだろう。無責任で不安定な意思決定が、「オプション確保」という名の現状維持を生んでいる。
 話をエネルギー政策に戻そう。政治が「これからは原発ルネサンスだ!」と言えば、公務員は「お説ごもっともですぅ」と承りながら、実際には火力も水力もしっかりと確保しておく。当然、「これからは脱原発だ!」と、きまぐれな政治家が言っても、「先生、さすがですぅ」と答えつつ、原子力もしっかりと残す。
 どうせ近い将来、「やっぱり原子力も必要だな」と言い出すのかもしれないし、その時になって「すいません、原子力はもうありません」などと泣き言を言っても、「それを何とかするのが君たちの仕事だろう!」と怒られるに決まっている。だから、「政治主導」を先回りしておいた方が無難なのである。(本当の政治主導なら、リスクが顕在化するたびにうろたえたりせず、「やはりこのリスクは取らなければならない」と改めて意思決定を下せる)
 鳩山・菅という憲政史上最低の総理大臣もひどかったが、現在の野田首相を筆頭に、これからは松下政経塾的なリーダーが続いていくだろう。『松下政経塾憂論』Link にもあるように、政経塾出身政治家は口先だけで言うことがコロコロ変わる(松下政経塾の初志とは乖離しているというのが同書の主旨)。その意味で、現在の日本政治は、日本社会の縮図でもあるのだろう。



松下政経塾   意思決定   空気   改革  

— posted by 宮島理 at 12:24 pm  

参院攻撃と中国のゴーストネット

Link

 衆議院だけでなく参議院もサイバー攻撃の被害に遭っていたようだ。セキュリティ意識の向上だけではなく、国家的なサイバー防御が求められる。

「関係者によると、衆院に送りつけられたウイルスは、感染端末の内部の情報を外部に送信するようプログラミングされ、送信先の一つが米国のネット会社が提供するフリーメールのアドレスになっていた。
 このメールボックスの『受信箱』のフォルダには、8月上旬以降に送られてきた数百通のメールが保存されており、送信者のメールアドレスの中には少なくとも、参院議員2人、衆院議員1人のものが含まれていた。攻撃者が盗み取ったとみられる情報も暗号化された状態で入っており、メールの件名や本文の可能性がある」(読売新聞Link

 このコンピュータウイルスは、中国国内のサーバーに強制接続するようになっていたという。拙著『あなたのスマートフォンが狙われている!』Link にも書いたように、以前から中国は、ネットスパイ網「ゴーストネット」を使って、世界100カ国以上にサイバー攻撃をしかけているという疑いを持たれている。
 ターゲットとなるコンピュータを「ゴーストネット」の監視下に置くために、メールの添付ファイルという形でコンピュータウイルスを送りつけ、ターゲットとなるコンピュータに感染させる。あとは、「ゴーストネット」を通して、機密情報を盗み出すことができると考えられている。場合によっては、ウェブカメラやマイクといった周辺機器を勝手に動かすことも可能だとも見られている。
 今回、衆議院と参議院をターゲットにした「標的型攻撃」が、「ゴーストネット」によるものかどうかはわからないが、手口は非常に似ている。こうした国家的なサイバー攻撃に対しては、個人レベルでのセキュリティ意識の向上だけでは対処しきれない(もちろん、セキュリティ意識の向上も重要だが)。
 不特定多数を狙う攻撃なら、攻撃側も不自然で大雑把な内容のメールしか送れないから、メールの文面もざっと見るだけで「怪しいかどうか」を判定できる。しかし、ターゲットをしぼった「標的型攻撃」の場合、攻撃側は取引関係などを調べたうえで仕事のメールをそれなりに偽装することができるから、メールが「怪しいかどうか」の裏を取るためには、電話で問い合わせるなどの手間がかかる。佐藤正久参院議員などは、それを実際にやっている。

「佐藤氏にも数年前から、月に数本の不審なメールが届いている。許可を得てパソコンの画面を確認させてもらうと、送信者欄には『外務省○○課○○○○』などと実名が書かれており、件名欄には『日米電話首脳会談について』とか『本省発○○発送データ』などと書かれ、ファイルが添付されている。
 秘密保全の厳しい防衛省・自衛隊で長年勤務してきた佐藤氏の事務所では、怪しいファイルは絶対に開かない。各省庁の担当部署に送信者欄の人物について問い合わせると、『すでに異動しました』というケースが多いという。犯人側は、省庁の名簿などを保有している可能性もある」(夕刊フジLink

 わが国では、2000年に中央省庁に対するサイバー攻撃が起きて以来、サイバー攻撃対策が強化されるようになっている。一元的に対応する内閣官房情報セキュリティーセンターが設置されているほか、自衛隊でもサイバー攻撃対策が強化されている。2010年には、サイバー攻撃を想定した合同演習「サイバー・ストーム」に、日本も初めて参加した。
 しかし、夕刊フジの記事でも指摘されているように、立法府である衆議院と参議院については、対策が遅れてきた面があるようだ。個人レベルでのセキュリティ意識の向上だけに頼っていては、佐藤議員のような人なら大丈夫だろうが、そうではない議員の環境において、必ず綻びが生じる。セキュリティ・ポリシーの強化、明確化とシステムの再構築が急がれる。


「スマートフォンやタブレット端末の普及が急速に進むなか、Androidをターゲットにしたウイルスや巧妙化するIT犯罪も急増しています。本書は最新のIT犯罪の手口と、身を守るためのノウハウを解説します」

標的型攻撃   ゴーストネット   サイバー攻撃  

— posted by 宮島理 at 11:11 am  

普天間・原発と集団的自衛権行使

 野田政権の面々が沖縄詣で。仲井真知事があきれているが、気持ちはわかる。民主党の「お遊び」でご破算になった以上、わが国はより大きなリスクを取らなければならなくなった。

「野田政権による沖縄訪問ラッシュに、沖縄がかえって不信感を募らせている。12日間で計6人。どやどやとやって来ては、腫れ物に触るかのように『おわび』を繰り返し、その同じ口で普天間飛行場の辺野古移設を宣言して帰る慇懃無礼な本土の人たち――。そんな風に映っている。(略)
『バーチャルリアリティー(仮想現実)で物事を進めるのはどうですかね』と仲井真知事。『辺野古は非常に時間がかかる、事実上不可能だと何度も申し上げているのに、それへの返事もない』。仲井真知事は、2010年の名護市長選で移設反対派の稲嶺進市長が当選するまでは『県内やむなし』としていた。
『市長さんを応援されたのは、民主党のみなさんですからね。原因をお作りになったことはお忘れなく』。一川防衛相にそう釘をさした」(朝日新聞Link

 民主党は「バーチャルリアリティー」で政治を行い、「最低でも県外」と口にした。それが無理だとわかると、今度はまるでゲーム機のリセットボタンを押すように、辺野古に戻ってきた。野田政権は、安全保障(およびエネルギー安全保障)をオモチャにした憲政史上最悪の鳩山・菅コンビLink よりはリアリストだと思うが、それでもリセットボタンさえ押せば大丈夫と考えている時点で、所詮は「バーチャルリアリティー」の延長である。
 こうなったら、より大きな戦略的ゴールを目指して、戦術を変えていかなければならない。戦略的ゴールは、朝鮮有事や台湾有事に即応する体制を日米同盟において強化していくことだ。
 普天間固定は、日本政府もアメリカ政府も沖縄も望んでいない。辺野古移転は「バーチャルリアリティー」となった。であれば、この際、それこそ再び「最低でも県外」を進めるのがいいのではないか。当然、そうすると在日米軍の即応力が落ちてしまうから、自衛隊で補う必要が出てくる。集団的自衛権行使を明確にし、自衛隊が積極的に朝鮮有事や台湾有事に関与していく体制を作っていくのである。
 反普天間運動は、反米闘争であり、中国を利する工作ではないかとの疑いを持たれている。しかし、私は純粋に沖縄の人々の「生活」の問題だと思いたい。「生活」の問題なら、「最低でも県外」を進めていくかわりに、集団的自衛権を行使することに反対する者はいないはずだ。もし、反対する者がいれば、その時はまぎれもなく中国の工作だと断定していい。
 朝日新聞などのリベラルメディアも、「最低でも県外」プラス集団的自衛権行使には反対しないはずだ。朝日新聞というのは面白い(?)新聞で、一見、リベラルで過激なようでありながら、本質的には保守、というよりも「保身」的である。規制産業で高給取りという立場からすれば、いくら表面的には過激を気取っても、いざというときには「保身」に走るのも当然かもしれない。
 たとえば「従軍慰安婦」とか「戦争責任」とか「サンゴを守れ」とか「外国人参政権」とか「東アジア共同体」などという、あえて極言すれば「生活」とは何の関係もないことについては、どんどん過激にリベラルに突っ走ることができる。しかし、日米同盟のような「安全保障」問題については、まさに「生活は第一」という観点から、朝日新聞は常に「保身」的なスタンスをとってきたのである(水野均氏の『朝日新聞は日米安保条約に反対していたのか?』Link によると朝日新聞は常にどっちつかずの態度で日米安保を容認してきた)。
 反普天間運動と同じことは反原発運動についても言える。もし、原発廃止か、原発依存度を大きく下げたいのであれば、化石燃料に頼らざるをえない。天然ガスなどは調達先が以前より多様化しているとはいえ、まだまだ化石燃料は、政情不安定な地域や、外交的手段に悪用する国からの輸入に依存している。
 となれば、わが国は、エネルギー安全保障において、非常に大きなリスクを取らなければならなくなる。具体的には、ここでも集団的自衛権を行使し、シーレーン防衛などに自衛隊が積極的に関与していく必要が出てくる。原発依存度低減プラス集団的自衛権行使というのが、当然の解となる。もし、この解に反対するなら、反原発運動は日本の国力を落とすための工作と見なされてもしかたがない。
 もちろん、集団的自衛権行使を実現すれば、日本人の血が流れる可能性が高まる。だからこそわが国は、同胞の血が流れることを防ぐために、在日米軍に依存し、原発に依存する道を選択してきた。いわば、現代版の「鎖国」をするために、在日米軍や原発という「迷惑施設」(この表現はもちろん皮肉)を受け入れてきたのである。
 そこには、日本人がみずから安全保障で血を流すよりも、在日米軍や原発に依存する方がコストが断然低いという、戦後ニッポン人らしいリアリズムがあった。私も、在日米軍や原発はない方がいいに決まっているが、それでも比較的低いリスクという意味で、消極的に在日米軍や原発を許容してきた。その考えは、基本的に今も変わっていない。(念のため言っておくと、私は原発だけを毛嫌いして「ない方がいいに決まっている」と言っているのではない。ノーリスクならそれに越したことはなく、火力発電所や自動車だってない方がいいに決まっているが、リスクとリターンのバランスを考えれば、原発も火力発電所も自動車も「必要」だというだけの話である)
 しかし、沖縄の世論は反普天間(かつ辺野古移設反対)であり、日本全体の世論は原発依存度低減に傾いている。どうしてそう傾いたのか、私には合理的な理由がないように思えるのだが、戦略的ゴールが保持されるのであれば、戦術の選択は自由である。必然的に、集団的自衛権行使に舵を切るしかないと考えるようになった。
 辺野古移転や原発維持(もちろん福島第1は廃炉にせざるをえないが)という比較的低リスクの道を拒絶する以上は、集団的自衛権行使という高リスクの道を、日本人が自覚的に選択しようとしているということなのだろう。もし、そういう自覚がなければ単なる感情に踊らされるバカだが、本ブログで常々言っているように、日本人というのは賢明なリアリストばかりだから、普天間問題や原発事故を契機として、「はるかに危険だが、はるかに自立的な普通の国」を選び取ったのだと思う。政治家は「バーチャルリアリティー」から早く抜け出して、国民の覚悟と決断に応えるべきだろう。


集団的自衛権   反普天間   日米同盟   普通の国   反原発  

— posted by 宮島理 at 09:58 am  

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